2013年12月24日

ガンダムSEED-D SS「メリークリスマス」


何のことはない、時事ネタ。
レイシンのクリスマスです。時期的にはこの間のイルミネーションの続き。
ただ、もう二人のクリスマスを追っただけの話です。
つまんなくてすみません。

では、どうぞ。




 今年のクリスマス・イブは冬日和になった。昨夜まで降り積もった雪も、陽の光が溶かし始めていた。
 午前中はその悪路を歩いて市営バスに乗り、地下鉄を使って銀座まで出た。
 とある百貨店に入り、地下の食料品売り場、いわゆるデバ地下でターキーと幾つかの総菜を買い求めた。
 シンは目移りする総菜の数々の試食に忙しく、レイを困らせた。恥ずかしいからやめろと言っても聞く耳をもたない。
 レイはため息ばかりをつく買い物となった。 昼飯は百貨店に入っている立食形式のイタリアンで済ませた。市場の半値で豪華な食事が楽しめるという利益度外視の店である。
 シンは肉とフォアグラのミルフィーユ仕立てを食べ、レイは渡り蟹のトマトクリームパスタを食べた。
「昼間っからこんなに豪華でいいのかな」
「晩の総菜が霞むな」
 などと笑い会いながら会話を交わし、帰路に着いた。
 家に帰り着くと、午後二時を回った所だった。ここからレイの一仕事が始まる。
 シンの為にケーキを焼くのだ。
 気兼ねのない二人暮らしとは言っても、主に家事全般を担っているのはレイだ。勝手気ままなシンは進んで家事をすることはない。たまにレイに言われてするくらいだ。
 さすが可愛がられ、大事に育てられた長男坊なだけはある。
 シンは役に立たない、そんな訳で年末の大掃除は業者にやってもらうことにした。
 クリスマスの明けた翌日に入ってもらう予定だ。
 休みと言えば日がな一日ごろごろしているシンのことだ、ケーキ作りに勤しむレイを横目にテレビゲームに夢中だ。
 それに飽きると、ふらりとキッチンに現れて、ケーキの進捗状況を偵察にやって来る。
「あ、スポンジが順調に膨らんでるな」
 オーブンを覗いたシンが言う。
「あたりまえだ。俺にやって出来んことはない」
 氷水の入ったボウルの上で生クリームを泡立てながらレイは答えた。
 つと、シンが生クリームをひとなめしていった。
「こら、まだ六分立てなのに、盗み食いするな」
「ちょっとぐらいいいじゃんか」
 叱られたからか、シンはそれ以上邪魔することもなく、ケーキは無事完成を見た。
 ふっくらと膨らんだ生地に、イチゴと生クリームを挟み、外装を生クリームで覆った、レイ特性のクリスマスケーキだ。美しい生クリームのドレープがケーキを飾り、イチゴが花を添える。
 玄人裸足とはこのことだ。プロ並みの腕前だった。そこいらのケーキ職人では裸足で逃げ出すだろう。
 シンの為、シンの事を思って焼かれたケーキは、レイは味見に一口食べるのみで、後はシンが全部食べる算段だ。
 レイが最後の仕上げをしている間、シンは珍しく自分で動いた。テーブルにクロスを引き、キャンドルに火を灯し、ランチョンマットを引き、食器を並べた。そしてその上に昼間買ってきた総菜を盛る。
 テーブルの真ん中には、スペースが設けてあり、そこにレイ力作のケーキが鎮座した。
 二人、向かい合わせで席に着く。
 ちょっとしたクリスマスパーティーの始まりだ。
「ウィーウィッシュアメリクリスマス、ウィーウィッシュアメリクリスマスアンドハッピーニューイヤー」
 シンが歌い出す。
 歌い終わると、シンが席を立って、
「ねぇ、キスしよっ」
「今から?」
 レイが渋るが、シンにせがまれ、仕方なくOKした。
 レイも立ち上がり、テーブルのケーキたちを挟んで唇を重ねた。
 舌の動きは激しく、シンは唾液をどんどん送ってくる。間違ってもケーキに零さないように飲み込みつつ、レイも反撃に出た。
 シンの弱点、舌の付け根を集中的に狙ってくすぐると、あえなくシンは乾酪した。
 唇がはなれる。
 大きく肩で息をしながら、シンが豆知識を披露する。
「こうやってさ、チューしてる間、二億個も細菌が行き交ってるんだって。知ってた?」
 それを聞いたレイはげんなりして、
「雰囲気を壊すようなことを言うな」
 うつむき加減で席に戻った。
 スパークリングワインの栓を抜き、グラスに注いでクリスマスに乾杯する。
 密かに晩餐は始まった。
 食品偽装もなんのその、買い求めた品はどれも美味しく、ターキーも中々の味だった。
「ねぇ、レイ。本当にケーキ食べないの?」
「ああ。一口味を見るだけでいい」
「じゃあ、食べてみて」
 シンに急かされて、レイはケーキにフォークを入れた。口に運んで租借する。その感想は。
「美味い…だが、甘い…」
 直ぐにワインで甘さを口から消し去ってしまった。
「本当に嫌いなんだな、甘いの」
 くすくす笑いながら、シンもケーキにフォークを突き刺した。
「うまひ」
 ケーキを頬張って、シンはご機嫌だ。
 次々とケーキを口に運んで行く。あっという間に半分ほどになってしまった。それを見たレイも満足げに微笑んだ。作った甲斐があるというものだ。
「後は、明日の朝食うよ」
「そうしろ。いくらおまえでもカロリーオーバーが過ぎる」
「実はさ、レイにプレゼントがあるんだ」
「何だ?」
 藪から棒に言われてレイは虚を突かれた。
 シンは隣の部屋へ消えると、背に何かを隠して帰ってきた。背中越しに見えるのは…
「じゃーん」
 両手で抱え持って見せたのは、大きな花束だった。
 レイは驚いて、ただ驚いて、それを受け取った。
 大小様々な季節の花が束ねられている
 レイはそれらを愛でながらシンに礼を述べた。
「ありがとう、シン。早速飾ろう。ああ、その前に…」
 レイは自室に戻ると、前もって買ってあったシンへのプレゼントを持って、リビングへ戻った。
「シン、これは俺からのクリスマスプレゼントだ」
「え、何、なにー」
 包みを受け取ったシンは、嬉しそうに包装をといた。出てきたのは手袋だった。
 前からシンが欲しい、欲しいと言っていたものだった。
「ありがとう、レイ! 俺、すっごく欲しかったんだ!」
 早速はめて付け心地を確かめているシンを背に、レイは花瓶を求めて洗面所に向かった。
 レイは花瓶に花を生けると、それを食卓に飾ったのだった。

 夜の帳が降りて、深夜一時を回った頃、レイの部屋を訪れる者があった。
「どうした」
「なんか、寒くて、眠れなくって…」
 シンが枕だけを持って、所在なさげに目を泳がせていた。
「来い」
 レイは上布団をまくって、シンに寝る場所を作ってやった。
「やったぁ」
 ぬくぬくと、レイにすり寄りながら、シンはレイの寝床に転がり込んだ。
 レイに頬を寄せて囁く。
「レイ…なんだか急に寂しくなって」
「どうしたんだ、いったい」
 何かがシンの琴線に触れたのだろうが、なんだろう?
「昔、家族でクリスマスを祝ったこと、思い出しちゃって…そしたら、泣けてきた」
 見ればシンの目が少し赤い。一度泣いた後なのだろう。
「幸せだったんだな」
「ウン…」
「俺は、いつも一人だった」
「ギルは?」
「仕事だ。だから、俺はいつも送り手のいないプレゼントと、一人では食べきれないホールのケーキだけを前にして戸惑うクリスマスばかりを毎年迎えていた」
「寂しかったの…?」
「ああ。寂しかった。でも、今はおまえがいる。シン」
「うん、ずっといるよ。そばに」
「だから、これでいいんだと思う。あの頃の俺に、未来には寂しくないクリスマスが待っているのだと、教えてやりたい」
「うん…クリスマスは誰もが幸せになれる日だからね」
「俺も幸せでいていいか?」
「当たり前だよ」
 シンの白い指がレイの前髪をかき上げて笑った。
 レイは急に安心したように大きく吐息した。
 罪を犯した自分でも、幸せでいていい日。
 全ての罪が許される日。
 断罪されていない自分でも、許されていいのだろうか。
「俺も許されていいのか?」
「また、レイは背負わなくていい罪を背負ってるんだろ。もう、いいんだから、全部終わったんだから。いい加減休みなよ」
「ああ、少し眠い、な…」
「お休み、レイ」
「お休み…シン…」
 語尾に寝息が続いた。
 シンは布団をかけ直し、レイに密着して、自身もまた眠りに入った。
 その晩、レイは夢を見た。ギルがいて、ラウがいて、ピアノがあって、幼い自分がいる。
 そしてシンがいるのだ。幼い自分がシンの手を取って、ピアノの弾き方を教えている。
 そんな、夢を見た。
 幸福な夢を。


つまんなくてすみません。
でも、幸福そうなレイシンのクリスマスなんて素敵じゃないですか。
家事に忙しいレイとか。
シンのごろごろしすぎっぷりとか。


posted by 松風久遠 at 00:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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