2013年11月25日

「ガンダムSEED-D SS神様、お願い」


レイシンのちょっと早いクリスマス。
短いですが、良かったら読んで下さい。

では、どうぞ。




「レイー、まだぁー?」
 玄関に座り込んで、靴を履いた脚をぶらぶらさせながら、出かける準備をしているレイをシンは急かした。
 午後六時、外で夕食をとるのにあわせて、丸の内のイルミネーションを見に行くのだ。それから東京駅へ移動して、プロジェクションマッピングを見物する。それが今日の予定だった。刻は師走、季節の慣例に習って、クリスマスらしいことをしようということになったのだ。
「もう少し待て。そんなに急がなくても予約の時間には間に合う」
「どうしてレイは出かけるのに、逐一時間がかかるんだよ」
「うるさい。もう出来た」
 レイが玄関までやって来たので、シンは立ち上がってレイを迎えた。
「今日は冷える。これを巻いていけ」
 ふわり、空色のマフラーがシンの首に巻かれた。巻くついでに、寄せられた額がシンの額にこつりと触れた。
「うん、ありがと」
 シンはコートの襟の中にマフラーの先っちょを仕舞い込んだ。
 そうこうしている間にレイは靴を履いて、準備万端だ。
「さあ、行こうか」
 玄関扉を開けると、冷えた外気が室内に忍び込んできた。
 ぶるり、一つ震えてからシンはレイと玄関の外へ出た。
 レイの言った通り、今日は一段と底冷えがする。口から吐く息が白い。
「行くぞ」
 レイが鍵をかけ終わって、二人は一緒に歩き出した。
 知らず繋がれた手は、公衆の面前で、などと気にしない。手を絡め、身体をくっつけ合って寒い冬の街を行く。
 トーキョー。オーブの遙か北に位置する島国にシンとレイはいた。日本国。アスカ家のルーツはこの国にあると両親に聞かされていたからだろうか、シンは声を取り戻し、すっかり回復したレイをプラントから連れ出して、このトーキョーに居を構えた。
交通網も整備されていて、住み良い都会だ。これほどの人口密集地でなければの話だが。

 まず、電車を使って丸の内まで出る。それから徒歩で南へ下って内仲通りを目指し、有楽町側を始まりとして、入り口にたどり着くと、一気に視界が華やかになった。
 クリスマス前であるにも関わらず、人のでは大したことはなかった。皆、穏やかにイルミネーションを楽しんでいる。
 大手町側の終わりまで内仲通り沿いの街路樹二百四十本が、シャンパンゴールドのLED百四万球に照らし出されていた。
「わあ、すごい、すごい! どこもかしこも金色だ!」
 シンが街路樹を見上げ、感嘆の大声を上げる。
 白い息がシンの動きに合わせてあちこちに移動する。
「なかなかどうして、見物だな、これは」
 黄金の明かりは、レイを美しく照らし、今にも光の中に溶け込んでしまいそうだ。
 そのまま消えてしまうように思えて、怖くなったシンはレイの手を強く握り直した。手袋越しに伝わる熱が、シンにレイの存在を教える。
「うん? どうした?」
「別にっ! レイ、綺麗だな〜って思って」
「褒めても何も出ないぞ」
 丸の内イルミネーションが、二人を穏やかに照らす。
 シン自身はそれを意識したことはなかったが、この雑踏にあって自分たちは周りにどう見られているのだろう。可愛らしいカップル? この場合、シンが男でレイが女だと間違われている…。それとも、男同士で気色が悪い?
「レイ! レイの髪と同じだ」
「ああ、そうだな」
 歩いてみれば一・二キロなんてあっという間だった。
「ねぇ、次は表参道のイルミネーションを見に行こうよ。それから、スカイツリーにも行こうぜ。自立式の電波塔としては世界一高いんだって!」
「そうだな、次の休みにはそこへ行こう」
 レイが微笑した。それはそれは美しく、シンの心を魅了する微笑みだった。
 連れてきて良かった。シンは心からそう思った。
 そのまま真っ直ぐ歩いて行くと、新丸ビルにたどり着いた。ここで夕食をとる。『ハッピークリスマスメニュー』と題されたスペシャルディナーを食べるのだ。
 シンとしてはイルミネーションよりか、こちらの方に重きが置かれていたのかも知れなかったが。
 だから、コートの下は二人とも正装だった。ジャケットにスラックス。レイに至ってはネクタイまで締めている。
 シンは第二ボタンまで前を開けていたが、レイに注意されて、きっちり上まで留めさせられた。
 レストランは三十五階にあった。テーブルに案内されるなり、シンは窓に張り付いた。
「すげー夜景!」
「夜景も料金の内だろう」
 トーキョーの夜景は素晴らしい。まさに宝石箱をひっくり返したような、きらびやかな煌めきのオンパレード。
 供される料理はどれも一級品で、シンは肉料理をメインに、レイは魚料理をメインにオーダーした。
 地球にいて良いことは、素材が天然のものであるということだ。プラントでは人工物が主で養殖ものが当たり前だからだ。
 前菜からデザートまでたらふく食ったシンは満足至極だった。レイもいつの間にか運ばれてくる料理を平らげていて、シンにはマジックか何かに思えた。あの魚はいつどうやってレイの腹の中へ消えたのだろうか、と。
 レイは行儀正しく、規則正しく、淡々と料理を口に運んでいるだけなのだが。
「美味かったね」
 食後のコーヒーを口にしながらシンが満足げにささやいた。
「値段が張るだけのことはある」
 レイも負けじとささやいた。
 代金は仲良く折半して、二人は新丸ビルを出た。その脚で東京駅へとって返す。
 途中、白いものが空から儚く落ちてきた。
「レイ、雪だ!」
「寒い筈だ」
 雪ん子は捕まったシンの手のひらで溶けて消えた。
「秒速五センチメートル」
「何?」
 シンのつぶやきを聞き逃したのか、レイが問うた。
「雪の落下速度。桜の花と同じなんだぜ」
「めずらしい。おまえがそんな風流なことを言うとは」
「何だよ、ばかにしてんのかよ」
「いや、驚いただけだ」
 すまない、と言ってレイは声を出して笑った。
「レイ、今笑った? 笑ったよね?」
「笑ってない」
「嘘だ、絶対笑った」
 シンはレイに顔を近づけて言い募った。レイはツボに入ったのか、今度こそ声を出して笑った。
「レイ、笑うなんて珍しい。さっきのデザートあたったんじゃないの?」
「あははは」
 尚も笑い続けるレイの肩に腕を回し、抱き寄せてそっと頬に口づける。
 レイは猫がするようにくすぐったそうな動作をした。笑い済んだレイが、お返しとばかりに今度はシンの頬に口づけた。そうしてじゃれ合いながら、東京駅へ歩を進めた。
 雪がレイの金髪に引っかかって、そして溶けて無くなっていく。
 少し風も出てきたようだ。
 東京駅に着いた頃には気温は零度に近かったかも知れない。
 駅前には既に人が集まっていて、物見遊山の見物客で騒がしかった。
 人波をかき分けて、柵で仕切られた最前列まで二人はやって来た。
 やがて、プロジェクションマッピングが始まる。
 プロジェクションマッピングとは、プロジェクターを使って建物に合わせた立体映像を映し出し、その建物が動いているかに見せるショーだ。
 東京駅の壁面をキャンバスに見立てて、様々な立体映像が、音楽と共に現れては消える。目まぐるしく変わる変幻自在の映像に、そこが東京駅の壁面であることを忘れそうになる。音と光のショーは人々の歓声と共に流れ続ける。
「レイ、来年も来ようね」
 レイの肩に頭を預けながら、シンが呟いた。
 ややあってから、レイが答えた。
「…ああ」
「来年も、再来年も、三年先も」
「そうだな…来られると、いい」
 明日も明後日も、百年先もずっと側にいるから…
 生きていてください。
 それが何よりのクリスマスプレゼント。
 レイ以外何もいらないから。
 こうして側にいさせて下さい、神様。
 神様、お願い。
 俺からレイを取りあげないで。
 人目もはばからず、シンはレイに口づけた。深く、浅くを繰り返し、ショーの光が二人を刺してもキスは続いた。
 永遠に刻が止まれば良い。
 神様、お願い。
 このまま刻を止めて下さい。
 どんな代償でも払う覚悟はあるから。
 お願い、クリスマスの神様。


東京の地理には明るくないもんで、トンチンカンなこと書いてたら、笑ってやって下さい。
イルミネーションとレイシンってまた、どんちゃんさんから頂いたネタなんですけどね。
似合ってましたか?
最期はどうしても切なくなりがちなのが、未来のないレイシンの悲しいところ…


posted by 松風久遠 at 12:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは!!
イルミネーションデートありがとうございます!!楽しかったです!

シンがオーブに帰ってくれた事も嬉しかったです!こうして2人で背負った傷を分かち合いながら、せめて少しでも長く一緒にいられたら素敵ですよね!! 確かにどうしても切なくなりがちですよね、設定が設定だけに。だからこそ、レイシンって、毎日を大切にできるといいますか、一日一日を悔いない様にすごせるとおもうんですよ。それって、素敵な事だとおもうんです。大事な事ですし。

秒速の下りは知らなかったです。雪と桜、同じ速さで落ちてくるんですか! どちらも儚げなイメージなのは、速度のせいなのでしょうかね。

あと、レイの胃袋。
涼しい顔していくらでも入りそうですよね笑

今回も小説ありがとうございました!!

Posted by どんちゃん at 2013年11月25日 18:58
こんばんわ〜
読んでくれてありがとうございます。励みになります。
ところで、シンはオーブに帰っていませんよ?
思いっきりトーキョーのある日本国って書いてあるんですけども。

そうなんです、雪が降るのと桜が落ちてくる速度は同じなのです。
よく想像してみると、なんかピンときませんか?

レイの胃袋ブラックホールだったりして(笑

ではでは。

Posted by 松風 久遠 at 2013年11月26日 17:29
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