2013年09月04日

「犬とハサミは使いよう ♯10 光陰犬の如し」


「おかえりなさい、和人くん」
おまえは映見! 大澤映見! じゃあおまえが藤巻蛍! この事件の真犯人?!
東川高校、図書室で原稿用紙を見つけた人間だった頃の和人。
思わず全部読んでしまった。
原稿、私の原稿、あれがないと私…と机の下で震えている映見。
原稿を渡してやると、一目散に逃げようとする映見を、呼び止めて、それを書いたのはおまえかと尋ねる和人。うんと映見が頷くと、早くその続きを読ませてくれ、頼むと言う和人。
続きを読ませて貰えることになり、早速読み終わった和人。
自虐的になる映見が鬱陶しい。
「どんだけ秋山忍が好きなんだよ。初めて読んだ時も思ったけど、秋山忍の影響受けすぎだろ」
これじゃ、秋山忍の劣化コピーになってるじゃないか、と感想を述べる和人。
「でも、めちゃくちゃ面白かったぞ。おまえの書きたいものはこれなんだってそう実感させる力はあった」
ほっとする映見。
でも、あの小説書き切ってないよな、と指摘される。
続きを考えている、という映見に、続き、書くんだな、楽しみにしてると言う和人。
秋山忍の大罪シリーズの後ろに原稿を隠す映見に、どこかの新人賞に応募しないのか、と尋ねると、プロの作家を目指すなんて、無理だよと慌てる映見。
「自信を持てよ、おまえの作品を楽しみに待ってる奴だっているんだからさ。俺だよ、俺」
「本当に?」
「勿論。早く完成させてくれよな」
「わかった。私、作家になるよ」
「お、やっとやる気になったか」
「うん、だから、もしなれたら、和人くんが一番最初に読んで。私の最初の読者になって」
「ああ」
「約束、だね」

回想終わり。
藤巻蛍ってペンネーム、和人くんの名前を並び替えてつくったの。
映見には和人の言葉まではわからないらしい。
何故和人かと分かったかというと、桜が毎日本を買いに来るわんちゃんがいるんだって、それにあの原稿の隠し場所を知っているのは私と和人くんだけだから。
「まさか秋山先生の飼い犬になってるなんて思わなかったよ。ヒドイよね、和人くん。死んじゃうんだもん。
私の本を読んでくれるていったのに」
「約束守ったよ、作家になったよ。この原稿で作家になるっていう約束は守れなかったけど」
気にするな、十分立派だよ。
作家になる為に何でもしたという映見。父から小説の書き方や作家の技術を一から教えて貰ったり、ちょとだけ父に口をきいてもらったり。
お、おい、それって俺との約束を守る為に…
「けどね、和人くんが死んじゃってから、この原稿の続きが書けなくなちゃったの」
きっと私が本物の作家じゃないからだね。汚い手を使って作家になった偽物だからだね。
「でも、偽物なら本物になればいい」
おおい、何を言ってるんだ?
「その為には自分の中の本物の作家を倒して越えるしかない」
だから、夏野を!
「それで秋山先生を呼んだの。私たちの思い出の場所に。私たちの愛した人を」
そんなの間違ってる。映見!
「私たちの約束を叶えよう」

2−A。
和人の生前の写真や筆記用具、アルバムが机の上に置いてある。
それを見ていた夏野の耳に、校内放送が飛び込んでくる。
「秋山忍、大事な犬は預かった。返して欲しくば、屋上まで来い」
怒りのオーラを身にまとい、夏野が屋上にやってくる。
「ふーん、真犯人をみつけたら、それが昔の知り合いで犯人側に寝返ったと。なるほどつまりは死にたいのね」
ハサジロウを構える夏野。
映見が和人をかばう。
「良い度胸ね、ていうかあなた、へえ、そう、あなたが藤巻蛍。それにしても和人くんの映見ねぇ。私のことも名前で呼びなさいよ!」
「私たちは作家です。作家らしくこれで勝負をつけましょう」
と万年筆を取り出す映見。
「そう、あれで勝負しようっていうの。わかったわ、決着をつけましょう。作家らしく執筆戦で」

「先に原稿用紙百枚の短編を書き上げた方が勝ちです」
「わかったわ、全力でぶつかってらっしゃい。その上で完全に倒してあげるから」
開始の合図は和人。
それじゃあ、わん!
早すぎる、夏野の仕事っぷりはいつも見てるけど、いつもより早え!
大澤流執筆術ダブルドライバーを発動して対抗してくる映見。
でもまだ映見には長時間の使用は無理だった。
大澤流執筆術ウエイクアップキャンセラーを次に繰り出してくる。
眠気に襲われた夏野はハサミで自分の太ももを刺す。
その後も大澤流執筆術は続くが…すべて見切られてしまう。
夏野の優位は変わらない。
冥土の土産に私の本の感想を教えてもらえますか、と映見。
悪くはなかったと夏野。
「そうですか読んでくれたんですね」
「なによ、満足だとでも言うつもり?」
「もう満足、もう終わりです」
映見がスイッチを押すと、本棚が移動し、全面鏡張りの部屋に!
すると、夏野が自分で自分を刺そうとし始め…
「私の本の中には幾つものキーワードが散りばめられていたんです。それらは何度も文章のなかに現れ、読者の無意識にあるメッセージを残します。ハサミを持った赤い瞳の黒女は敵だから、倒さなければならない」
「読者に暗示をかけたのか!」
俺が夏野に飛びかかったのも、あの暴漢たちも、それで…!
それが大澤流執筆術最終奥義ブリューナク。
待っててね、和人くん。これが終わったら、すぐにあの原稿の続きを書くからね。約束を守るからね。
「作家をなめるなー」
と、夏野が口で原稿を書き始めた。
勝負あり、勝者、秋山忍!
死のうとした映見から、万年筆を取り上げた和人。
隠してあった原稿を持って来て、映見に訴えかけるように吠える和人。
「書けって言ってるのよ、その犬は。新人賞の選考に圧力はかけていない。あなたの父、大澤愁山はそういってた。あなたは実力で作家になったの。事実、あなたの小説は本物よ。私が保障するわ」
「私は書いてもいいのかな? やっぱり書きたいと思うんだよ。好きだから。それで、いつか、私の本を読んでくれるかな」
「わん!」
「だから書きなさい、あなたが書いたものは、私とそこの犬が読んであげるわ」
「ありがとうございます、秋山先生」
泣く映見。

「行くわよ、後輩」
「はい、先輩」
美しき師弟愛か…
俺の右手が勝手に…!
大澤流執筆術ブリューナクを早速新刊に取り込んでみたのよ、と夏野。
良かったんでしょうか、という映見に、いいのよ、こうでもしないと私に襲いかかってもこないんだからと夏野。
全身が勝手に動き始める和人。
さあさあ、とウエルカムな夏野と、本と引き離されたくない和人の戦い……

posted by 松風久遠 at 18:59| Comment(1) | TrackBack(2) | 犬とハサミは使いよう | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
Posted by 履歴書の封筒 at 2014年05月14日 18:31
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犬とハサミは使いよう TokyoMX(9/02)#10
Excerpt: 第10話 光陰犬の如し お帰りなさい、和人君。映見、大澤映見、お前が藤巻蛍なのか。 図書館で原稿を忘れてしまった映見。それを見つけて読んでしまった和人。早く続きを書いてくれ。超ネガティブな映見だった。..
Weblog: ぬる〜くまったりと
Tracked: 2013-09-05 20:01

犬とハサミは使いよう #10
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Tracked: 2013-09-05 23:21
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